ウソ日記

ない。ある。

精進祭

古くからある、道を、小さな竹の子が、列を、なして、大社の裏門へと、祭りの後の散らかりものを意に介すようなそぶりも見せずに頭を右へ左へと揺らしながら進んでいく。子供の背丈ほどの高さにぼんぼりがまだ点いていて、電気代はどこに請求されるのか。町内会の雑費に紛れているとも聞く。相続を放棄された草鞋衆の旧宿舎は役場預かりになって久しいが、今日だけはぽつぽつと窓に灯がともる。酒の手配は安田商店で、銘柄は菊水と決まっているが、それはせいぜいここ30年の伝統だ。それ以前のことを知っているものは、いやーいろいろあってねと話を濁す。

良さ校生

 たとえばmakeUmoveさんみたいな、おっさんの動きをする女子高生の形をしたもの良いよね、って話はしたいのだけど、そこから割とすぐに処女信仰告白とか窃視趣味告白めいたものに自分の中で話が繋がっていくのでこの話はやめよう、ってなる。その良さを、若い女子が、自分が性的に見られることを意識せず動いている感じの良さ、と翻訳すれば、だいたいリンクのつながりを分かってもらえるかしらん。調子乗ってる女の子は良い。良いのよね。なんで良いと感じるのだお前は?

糸を引く音

 納豆を手にもって、そのまま両の掌をすり合わせてみよう。はぜるような豆の躍動、多糖類の懇願。お辞儀をしあった高々分子が接点に引きずられて空気を孕み、愉快で華奢な音楽を奏でる。あなたはもちろん初めてだろうから、十全にはその旋律を広げていくことはできないだろうけど、それでも結構ピンキーでポップなその音を楽しめたんじゃないのかな?

 納豆楽団、あるいはストロングビーンズ。納豆の奏でる音で生計を立てようと試みた人間はもちろん日本にもいた。だけれども彼らの出したメジャーアルバムは記録に残っている限りそれぞれ1枚のみ。とてもじゃないけど彼らをそれだけで養っていくことはできなかった。しかし、世界には、納豆の音楽で生計を立てている集団というのが存在する。例えばスラウェシのリグ族。彼らの若い男性は成人すると島々を渡り、各所で納豆を奏でてはその返礼として魚、芋、干したココヤシ、あるいはいくらかの現金を受け取るという生活をする。おおよそ10~20人の集団で一艘の船を使い、マストの根元には納豆菌のついた一握りの干し草、彼らはこれを歌の住み家と呼ぶ、女人禁制で彼らの妻子はその遍歴には帯同しない。

うのこたけのこ

 これだけでよかった。

 筍を採りに藪に入る。普通は春が旬だけれども、この道の向こう側の竹やぶだけは毎年秋に生えてくる。祖父が私に教えてくれたものはそれぐらいで、他は本当に困った人だった。浴びるように酒を飲んでは、だれかれかまわず毎日諍いを起こしていた。
 クーラー病の治療薬として、秋筍がいいとテレビに話題でなってから、あの竹やぶにも立ち入り禁止のテープを張らなくてはならなくなってしまった。それでも、たまに近所の人間のものではない車が止まっているのを見かける。まあ、ろくに管理をしてない竹やぶだ。大きくなったようなのしか見つかりはしないだろう。それにどのくらいの値が付くのかは知らない。あと、足場が腐り竹ばっかで最悪だし、下の沢に転がり落ちることがあるかもしれないけれども、私は知らない。
「筍を焼いて、七味ねえ。多分家のはそれだとえごくて食えないよ」
「あ、うちは出荷もしてたから」
 大学のときに知り合った友人Aとの、いちばん最初の会話は筍のことだったというのを覚えている。彼女は京都府の出身で、卒業後は家業を継ぎに地元へ帰った。今でも時々ネット上でやり取りをする。最近火の玉を見たらしい。ぼうっと青白く、竹と竹の合間を漂っていたそうだ。

カネシの涙

 カネシに身も心も染まってしまった人々を、どのように救えばいいのか。WHO世界保健機関は18日、総会にてカネシの使用禁止を賛成192 棄権1の賛成多数で採択した。唯一棄権した日本であるが、採択後の記者会見でこの決定を受け入れることを表明した。この決定について、国内では連日のように議論が沸き起こっている。曰く、コホート研究によりカネシの平均余命に与える影響はタバコ以上、曰く、行絡要因が完全に廃し切れていない、曰く、これは外圧によるあからさまな日本文化潰しだ、等々。そんななか、2ちゃんねるの最悪板で巻き起こった暴動煽りは瞬く間に大学生活板、ゲハ板に広がり、21日の神戸WHO日本支部襲撃へと発展した。数千人のカネシストが建物の周囲を取りかこみ、ラードを警備員に投げつけた。警官隊との衝突により1人が死亡、13人が負傷し300人以上が逮捕される事態となり、これに激昂したカネシスト達はさらに強硬な手段に出る。27日の月曜日、東京六大学自治会は共同で永久闘争宣言を発動、WHO脱退が遂行されるまで闘争を継続することを宣言し、昼休み中の主要講堂を占拠した。寸胴と強力なコンロ、そしてあのポリタンクが大量に運び込まれ、大学はカネシの匂いで満ちた。第三次大学闘争の幕開けである。

ディズニー督戦隊

ディズニー督戦隊はディズニーキャラの唯一性を守るため、余剰ディズニーキャラの抹殺を旨とする特務部隊である。主な装備は核地雷。

エビスビール工場の地下に帝国があることをご存知だろうか。帝国というからにはそれ相応の版図と国力を有していなければならないが、彼の帝国の版図は、面積にすれば日本列島の約2倍に達し、人口は1000兆を超える。そう、彼の帝国とは、人類が発見した中で最大のアリの巣である。それだけのアリを支える餌は何かといえば、エビスビールが毎日廃する麦芽の絞り粕だ。エビスビール工場は広大な所内に廃棄物処分場を持ち麦芽の絞り粕もそこに廃棄しているが、それがこの巣を支える重要な食料源となっている。

コロニーお年になんか付き合うかよ!
おとしだま!

かわいいかわいいしたい
かわいいかわいいはどこ?

ロングテールアッガイ

九州の阿蘇カルデラ内部は現在農耕地となっており、九州馬等の牧畜が盛んである。名物料理の阿蘇丼は、大き目のどんぶりにご飯を凹状に盛り、真ん中のくぼみに生の馬肉、ニンニク、しょうが、醤油、そしてマヨネーズを豪快に載せ、最後にあさつきと大葉を散らしたもので、現在13軒が提供している。

アイスクリーム

 ぽたぽたとコーンからこぼれる溶けたアイスクリームに、目をつけた一人の少女がいました。世界中の溶けて散逸したアイスクリームの総量は年間35万トン、これをもし独り占めすることが出来たなら。
「一生アイスクリームには困らないわ」
 少女は祖父の書斎にもぐりこみ、それを実現するための方法を探します。書斎には英語、ラテン語、ドイツ語、古アゼルバイジャン語、琉球語等々さまざまな言語の本が並び、手に取った本が何語で書いてあるのかを調べるのにまず半日ほど掛かってしまうこともあります。少女は黙々と調べ続けました。その過程で彼女は15の言語を日常的に読み書きする能力と、31の言語の基本的な文法と語彙を習得しました。そして8年の時が過ぎ、少女はついに散逸アイスクリーム回収機のプロトタイプを完成させました。原材料は空き缶と塩と大量の毛糸、6月12日に少女は試運転を行い、24時間で約0.3gの散逸アイスクリームの回収に成功しました。
「まだまだだわ」
 そしてさらに8年。少女はついに散逸アイスクリーム回収機の正式動作版を完成させました。原材料はトカマク山羊の血140リットルと黒蜥蜴粉末2400匹分、マグダラのマリアの髪の毛5000mとモーセの吐いた息1立方メートル、そしてミキサー車1台。24歳になった彼女は期待を込めて回収機を作動させました。しかし、回収量は24時間でわずか20g。計算よりもぜんぜん足りません。
「おかしいわ」
 彼女は今までに書いた全ての計算書を見直します。彼女の設計にはまったく間違いはありません。世界中の全ての溶けてこぼれるアイスクリームは、この機械によってその前に回収されるはずです。
「もしかして」
 彼女は街に出て、大学の図書館でハーゲンダッツ、ロッテ、サーティーワン等、主要アイスクリームコーポにかかわる最新の論文にアクセスします。そして、世界が彼女の知らないうちに変わってしまったことを知ったのでした。アイスクリームは、彼女が書斎にこもっていた16年の間に、溶けてこぼれなくなっていたのです。南米の密林で発見された新型の増粘多糖類が、アイスクリームを室温では溶けず、しかし舌で舐めたときには以前よりもさらに滑らかに溶けるように進化させたのです。
「完敗ね」
 彼女は図書館を出ます。初夏の青空のまぶしさに、彼女は目を細めます。