ウソ日記

ない。ある。

鳥1

 どこまで走ったのか分からなくなって、財布を広げるとぎっしりの千円札。走れば走るほど地平線は遠くなっていく。息をつく。ここはどこ。山が見当たらない。川も見つからない。多少の起伏はあるが、それ以外の特徴が何もない草原。木も生えていない。ていうか日本じゃきっとない。うわあああああ。そう叫んでみる。ぎゃわわわわん。そう泣いてみる。何も起こらない。誰も助けてくれない。そりゃそうか。
 自分が何を持っているかを確かめる。さっき開いてみた財布、携帯、自転車の鍵、肩掛けバッグ、中には筆入れ、電卓、ゲームのカード、パン。僕の名前は片桐豊。カタギリユタカ。日本の東京都瑞浪区清隆町字三軒家24-3。おばあちゃんの名前は明子、お母さんの名前は美紀。お父さんの名前は和義。携帯は繋がるかしら。繋がった。
「もしもしお母さん」
「あんたどこに行ってるの!心配してるのよ!どこにいるの迎えに行くから」
「それが分からなくてなんかすごい広い草原にいる」
「ふざけてないでよ」
「ふざけてないよ」