ウソ日記

ない。ある。

エンリコ・フェルミ

 彼の性格からいって、このレターがまったくのウソである可能性はかなり低い。しかし、内容は到底信じられないようなものだ。エンリコ・フェルミナチスのUFO開発に携わっていたなんて・・・・・。そもそもフェルミは、第2次世界大戦の間アメリカにいたはずではなったか。そんな疑問に対しては、彼はこのような回答を記している。「亜米リ加にわたったエンリコは、影武者で有った」
 ナチスユダヤ系科学者を多く国外に流出させてしまったが、彼らは全て偽者だったというのだ。そしてナチスは、秘密裏にUFOの研究を進めた。ベルリン陥落の際、とらわれたナチスの重鎮や死んだヒトラーなども全て偽者である。ナチスたちはそのときすでにUFOを完成させ、地球外へと飛び去ってしまったのだ。

 はっきり言ってよく分からない。なぜ、彼がこんな支離滅裂なレターを残し失踪してしまったのか。分かれたいなら、せめてそう言ってくれればいいのに。確かにここ最近、私たちの間にはどこかすれ違いがあった。だからって、こんなやり方・・・。
 そう、こんなやり方、なのだ。こんなやり方を、彼はする人間ではない。では彼は、言い方はあれなのだが、イカれてしまったのか。頭がおかしくなってしまったのか。もしかしたらこのレターは、彼の心の最後の叫びなのだろうか。

 レターは27行組みのレター用紙5枚分に及び、総文字数は4087文字。内容も支離滅裂だが漢字使いも支離滅裂で、上に引用した文のように当て字の一部がひらがなやカタカナに戻っていたりする。・・・私は思ったのだ。もしかして、これは暗号ではないかと。だから私は文字数を数えた。4087文字。61×67。素数×素数である。これで何か思い出さないだろうか? そう、1974年にアレシボ天文台から宇宙へ放たれた例のメッセージと同じである。早速私はレターの文章を67×61に組み、漢字を黒のドットで置き換えてみた。するとどうだろう、それがそこに立ち現れてきたのだ。職人技的なドット打ちで描かれた、エンリコ・フェルミの肖像が。

 ますますわけが分からなくなった。お前そんなにエンリコ・フェルミが好きか。