ウソ日記

ない。ある。

擬似的な数学に耽溺する

 擬似的な数学に耽溺する。朝起きれば1と2の間の初々しい愛情に心を奪われ、10時の時報の音を聞いては√された二つの分数の分子と分母に関係を尋ねる。料理は下りつつある等比級数、駆け上る時間の積分に息を止めてコショウを振る。トマトは5、赤い5。タマゴの10と合わせれば15になって、15は幸せな数字。私は階段が好きだから。
 階段に座って午後は本を読む。トレーシングペーパーになぞられた、葉っぱの謎をめぐる大事件。葉っぱ関数と密室関数が互いに共振し、ついに殺人事件がおきてしまう。それが極値なのか極大値なのか、プラトーに陥るかカオスに陥るか、数学探偵と偽数学探偵、そして一癖も二癖もあるクルハハシ・ホテルの面々が、それぞれの思惑によって玉突き事故を繰り返し、物語はクライマックスへと続かない。じらされるのが、また楽しい。
 日が翳り、気が付けば雨。洗濯物を取り入れなくては。