ウソ日記

ない。ある。

西鉄高炉

 そういえばつい最近メッセンジャーデビューした程度には、僕は時代の波に取り残されていますが、名古屋の廃墟として有名な西鉄高炉はまだ取り壊されていません。先日見に行きました。東山山地を越え平和公園の向こう、雨で水かさが増えた茶色の黄名瀬川を越えてニセアカシアの茂る河川敷、幾つかのブルーシートハウスが背にして並ぶ金網のあちら側に抜けるには、東側のナガイモ畑を抜けなければなりません。ちょっと神経を使います。
 西鉄高炉は昭和13年、旧名古屋電鉄操車場の跡地に立てられました。二気筒式の循環型高炉で、当時としてもとても珍しい型のシステムだったようです。オーストリアでも数機、この型の高炉が建造されたようですが、それとこの西鉄高炉以外にこの型の高炉が作られたという資料は残っていません。
 ニセアカシヤの樹冠からにょっきりと身体を半分出したその姿は、とても奇異に見えます。なんというか、そう、人の心臓の模型あるじゃないですか、理化の実験室とかの。本体はあれの形にそっくりです。そして、その右心室の斜め上あたりに、人の頭のようなモジュールがついている、そう思ってください。
 この高炉の近くにラーメン屋さんがあります。花吉というそのラーメン屋の主人は、昔、西鉄高炉に勤めていたことがあるといいます。60を越える彼の作るラーメンはしかし割とアバンギャルド。濃厚なとんこつに、ドライトマトが薬味として乗っかっています。その強い酸味と風味が、結構おいしいです。