ウソ日記

ない。ある。

二階堂氏

 玉ねぎのような二階堂氏に、僕は小鳥になった。小動物が動くということはなかった。ただ、弟さんの形見を背負って、優柔不断になっていく。
 手を、少しずつ手を伸ばしていく。ぬるりと触る視野外の世界。大体分かったもんじゃない。すべったあげくにいくつもリンゴをこぼして、手なんかを差し伸べられてしまった。あごについた液体をぬぐう。ざらっと砂のようなものが混じった、粘度のある、液体。西瓜の種を飛ばす。
 確かに玉ねぎだった。二階堂さんの肌は。何で二階堂産の肌のことを僕が知ってるのかとか、そういったこと、触るんじゃないよ。公園でベンチが二個。二個のベンチはそれぞれに重石が置かれている。座るところに。座れないじゃない。シンカーとツーシ−ムが結局よく分かってない。歌を歌いたいと思え、歌いたいと思え。それは義務であり脅迫だった。大人のやり方は汚い。タケヤブヤケタに汚い。
 シンカーとツーシームは、服の名前だったと二階堂氏に教わった。長袖のシャツなんだけど、20年代ごろ流行った襟の形で、シンカーは幅広の、ツーシームは二段折りの。そういうアイスクリームもあったらしい。僕らは棒の、ソーダのアイスを食べながら。