ウソ日記

ない。ある。

ミネソタ

 たった一度だけ、私はガーネットに会ったことがある。その冬は記録的な寒波がセントポールを襲い、路面どころかタイヤは凍るし、上下水道もヒーティングが追いつかなくてところどころ寸断されたりととにかく大変だった。とくにまあ、私が住むミャオ族街のような、あまりインフラの整備されてないところは。
 シンリンオオカミたちが入ってきたのは、森にももう餌となるような動物たちがいなくなってしまったからだろう。そう、野生の獣たちにも、あの寒波を耐え抜くのは相当厳しいことのようだった。路地に、ゴミ置き場の陰に、街灯のない、見捨てられた空き地に、彼らは潜み群れた。ガーネットの統制の元に。
 ガーネット、彼は人間だった。そしてオオカミだった。黒檀の肌と長い筋張った手足を持っていた。19歳のときノースセントラルを中退し、ウィノナの狼の群れに入ったという。彼はその群れの中で徐々に順列をあげ、最終的にボスとなることに成功した。ここまでの話は、よく週刊誌やテレビで語られてるようなことだ。

 激しい戦闘があった。

 彼は、ボストンへと行ってしまった。