家庭菜園とスズキの魔法

　段ボール箱とガムテープと新聞紙とカッターで秘密基地を作りました。きちんと目張りをして、入り口を二重構造にすれば真空にも耐えます。ヤクルトの空き容器はレーダーにもなりますし、ビーム砲にもなります。カラーテープで彩りましょう。

　紫外線による化学変化の赤茶けたメタンの雲の層は、しかし私たちがオゾン層を普段の青空のもと気にすることがないのと同様に、彼らの意識には上りません。彼らの住むのはフラットな固体の水の大地に変成氷の礫が無数に広がる、見た感じはほとんど平凡な風景です。地球にだって砂漠と呼ばれる地域に行けばこんな感じの景観はたくさんあります。気温を除けば。

　カラーではなくフレーバーで分離するのが最近のトレンドです。どちらにしろ、流量を保つことが必要です。ワインバーグ＝サラムの戯言はこの際忘れましょう。ビューネッカー＝スズキ＝ハの妄言もです。鈴木信者には怒られそうですけどね。カレーにはエビがいちばんです。と、ついでに私の嗜好なども紹介してみます。自意識を過剰気味に調整していかないと乗り切れませんので。

　さて、ダイブです。

　
　プチトマトの赤い実が連なるその房の茎の緑をたどり主幹に到達しました。細かい毛、ナスの仲間の放つ独特の揮発物質の芳醇な気。細かくそれこそリアス式海岸の同じフラクタル次元を備えた葉の縁のぎざぎざを透かして太陽が見えます。ハツカダイコンは間引いてお味噌汁の具にしましょう。アブラムシを退治するのは命がけです。出来ればテントウムシに任せたいところです。ニジュウヤホシには注意。
　洗濯物を干しに現れたのはスズキさんの奥さんです。先ほどのスズキ氏とはまったく関係ありません。ぬっ、と彼女の体が動いて、日がさえぎられます。ジョウロを持ってきました。このプランターに水をやろうとしているようです。

　あ、われわれに気がつきました。