フレスコ画
安っぽいアルミの灰皿、旋盤仕上げの鍔付きブッシュ。右斜め後ろからのデフ、私はタバコを吸う。
吐く。そして……
「ダメだよ、ハードボイルド気取っても。」
「ハードボイルドなんだ、これ。」
男達はベースボールの試合に夢中だ。時代遅れの14インチのブラウン管の画面を皆、何事をも見逃すまいといった表情で見つめている。可聴域ぎりぎりの低音で唸りをあげているのは、テレビと同程度には時代物のこの店の電源装置だ。ワンアウト一、三塁。内角低めへのスライダーを上手くすくってレフトへ大きなフライだ。キャッチと同時に三塁ランナーオフサイド。
「……オフサイドはサッカー。」
「サッカーって何?」
灰色の風。
1937年、欧州では戦乱の空気が大陸をつつみ、アルゼンチンはパタゴニア、年平均風速毎秒12Mの大地では一人の青年が成人を迎えた。
後のJ・F・ケネディである。