深海病

　魚って恐いじゃないですか。魚の目。もっと恐いのがクラゲです。つまり海が恐いんです。

　水、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、砒素、ウラン、そういったものの混合物の中で息を吐きながらすーっと沈んでいくと、ある一定の深さで途端に水温が下がって、遠くに発光体や生命である重量物の影を見る。違和のある目が違和のある思想を打ち出して口を開け飲み込もうとする。影が、大きさという哺乳類にとって必然的な恐怖の条件を供えた影が、いくつもいくつも現れて距離感をなくす。

　スイカとか好きです。夏は好きです。明日がアサガオみたいだっていうのは分かります。蔓が竿を登っていきます。その竿は兄の釣りざおです、・・・でした。お盆にはいつもは親戚が集まって宴会みたいなことをしていたのですが、一昨年からなくなりました。母がよく、餃子の皮を揚げたのに中華餡をかけた皿を出して、私はそれが好きでした。

　冷たかった。