ウソ日記

ない。ある。

大叔母

 午後から来る予定だった大叔母が、「捕まえに行くのよ。」とだけ電話の先で理由を言って、インドに行ってしまった。叔母の61回目の誕生日を祝う席を準備していた私達は、急に出来た空白の午後に戸惑った。
「どうしようか、これ。盛り付ける?」
「盛り付けてもなあ・・・。」
 じゃあ誰かの何かを祝おうか、という話になった。しかし誰も、何も「祝うべきこと」を持っていなかった。

 3日後、大叔母が日本に帰ってきて、私達の家に姿を見せた。立派なアロハのダーリンと共に。立派なアロハのダーリンは、結局残ってしまっていた三日前のスペアリブの香味焼きを、美味しそうに平らげた。大叔母は
「いい人だろ?」
 と自慢気に言った。私は、「来週あたりにお披露目会する、とか言い出すんだろうなあ、」とか思った。大叔母の荷物の金色の蛇が、しゅるっと舌を出した。蛇は生ものしか食べないんだろうなあ、とか思った。蛇に気を取られているうちに、大叔母の目が緑色になっていることを知った母が、大叔母にプリンを薦めた。