ウソ日記

ない。ある。

リグ

 放棄されたコントロールセンターの、電源が入ってないのに緑白く光っているパネル。放射性元素の崩壊による各種線を最大限可視光に変換している。そこに胞子の集落がある。光子をサイクルして、次の時を待つ。
 長い長い廊下がある。加速用の電磁石がところどころ剥き出しになっている。過去は真空の海に、溢れる前ヒッグス粒子小波を立てさせることを目的としたそれは、現在、胞子たちの星への旅の出立地として運用されている。

 100年ぶりに火が入る。弱った太陽の光を蓄え続けた、イジェクションが開放される。複雑に回路網を形成した菌糸を、トリガーが次々に渉っていく。大電流に耐えられるよう縒り合わされ、外側をキューティクルで覆われた主菌糸に、フラックスが開放される。

 向かうのはこの星か、それともあの星? 数億年の時間を無視できるのならば、行けない場所なんてない。