ウソ日記

ない。ある。

雨が降る

 反復する横とびの話をする。好奇心に憧れたネコ。水溜りに転がった長靴の持ち主を探す。華麗に踊る傘群。
 反復する横とびは水溜りの水をはね散らかすから、好奇心に憧れたネコはさっと飛びのく。ざばあ、向こうから走ってきた車がわだちの水をざばあ。長靴の持ち主は倒れている。雨の中、搬送される。信号機は青になりスクランブルの交差点とやら、麦畑の音楽が、まだまだ雨は続きますよということ、まだまだ雨は続きますよということを。好奇心に侵されたネコ、まだ雨の中をさまよいあるく。ドアノブの彼方から虹が出て、そっと手をさしのべる。

 雨宿りの時間は好きだ。何もしなくていいから。

 虹には二人の兄弟がいる。タロウとサスケ、どこか日本人の名前のような二人は、二人ともトロンととろけるような身体をしている。気が緩むととろけて、お母さんに叱られる。虹の身体はとろけない。だから虹は、二人の兄弟のことがちょっと羨ましい。好奇心に震えたネコは、虹の手のひらをペロンと舐める。おいしい。だから今度は噛み付く。殴られる。