ウソ日記

ない。ある。

飽きるまで

 百万歩ほども歩いてきたので、そろそろ飽きてきた。そろそろ寝転がりたくなった。背中が痒い。どうも殻が割れて中から羽が生え出してきたようだ。羽化だ。羽化になったのだ。僕は羽化になった。
 うかうかしているうちに、早く。
「逃げられないぞ、ルパン」
 うかうかしているうちに、遠くへ。
「逃げられるもんか、まったく」
 ため息をつきながら逃げた。

 本当は電信柱か高層ビルか、とにかく高いところに摑まって羽化しなきゃならなかったのだけれど、そういうものはもうない。手入れをするヒトがいない。骨の手たちは手入れはしない。そういうものか、そういうものだ、ルパン。もう駄目なのでみかんを食べながら目を閉じることにした。もう駄目だ。