ウソ日記

ない。ある。

スイカズラの抑鬱

 イモムシ型の労働者たちは押さえつけられることになれているからいいのだけれども、ハネトビムシ型のシーカーたちはそうでない。局の人間に時たま逆らい、別の山の向こうまで飛んでいってしまう。間に挟まれて面倒なのが私たちだ。なんのかんの言って飼っている者は責任を負わされるし、かといって彼らに直接言う事を聞かせるだけの権限もない。
「お茶にしましょう。」
 ユウコさんが言う。

「ユウコさんは、どうやって言う事を聞かせてるんですか?」
 甘い菓子、緑のお茶。緑の、だって。だって最近緑のお茶は自分では買って飲めないから。アーモンドの細かく砕いたのがまぶしてある、おそらくはメレンゲを焼いたと思われる軽い食感。ああ、これはスイカズラだ。たしか球状の回転式遊具だった。少し涙が出てきた。
「言う事を聞かせているという感覚はないかな。」
「でもだって、ユウコさんの」
 シ−カーが戻ってきた。私たちは急いでお茶の残りを片付けると、腕の中の労働者たちに声をかけ立ち上がって歩き出した。