ウソ日記

ない。ある。

フォーミング

 ガードレールが排除されてエンドウの桟に置き換わった。カーブミラーはサルナシに。収穫期は初夏。先生が転任された。
 大学から駅までは10kmほどもあり、なぜこんなところに立てられたのかよく分からない。私は別にそこに通っているわけでもないのであれだが、生徒は不便だろうと思う。それとも大学生というのは自分の車を持ってたりするんだろうか。まあいい。
「転任って言う言い方でいいんだっけ? 何か別の言い方あったような気がするけど。大学の人が他所移るときって。」
「何? 左遷?栄転?」
「そこら辺はぜんぜん違うんだろうけれど……、まあ、状況によっていろいろ変わるんだろうね。どこ行くんだかって聞いてるの? たしか近畿の方だっけ?」
「みたいね。なんとか研究所、て感じのとこらしい。」
 私たちは耕作する。西友はオニグルミの森に、イオンはトチノキに。そこからどうなってしまうのか、まだ私たちには分からない。私たちの指先から流れ出るイモムシの姿の労働者たちの背には、蛍光グリーンのナンバー。4桁まである。