ウソ日記

ない。ある。

モーリスの声

 思われてみた。色鉛筆で描かれた雨のように思われてみた。そのことは、そのこと自体は蝸牛の殻の色素のひとつで、この草履たちに返す言葉を分け与えない。五階建ての雑居ビル、隣のマンションとの壁の間に草履たちがコロニーを作る。草履たちが思う。私を思う。
 好奇心とコンドーム、その音を解するそれはレ。おとなう魂と寄り添った者に聞こえた。ソ、そこから始まる。飛び立った。
 モーリスの声。

 しとしとという音というその雨はまだ草履たちが影から出てくるのを拒んでいる。草履たちが出てくるのを政府は阻止しようとしている。経済に市場のためにだ。アレスに始まる時代を渇望して。ブランコにも経済と市場を走らせ保護している。草履は邪魔なのだ。たまに子供が滑って怪我をしたりする。そしてごくごくたまに、死んでしまうときもある。
 子供ではないが、安岡君も。
  
 
 雨と草履の時代より。