ウソ日記

ない。ある。

足跡

 足跡が残っている。

 足跡というものは普通雨が降れば消えるものだし、たとえ降らない日が幾日続きたおしたとしても少しずつその痕跡は損なわれてしまうものだ。長い時間単位における土や泥の流動性や他の生物による撹乱、やがては見分けがつかなくなる。たまに信じられないほどの好条件が重なり、堆積岩層の痕跡となって再度地表に現れるものもあるが、それらはたいてい化石と呼ばれ考古学者が丹念に剥ぎ取り生活の糧にする。岩盤に固定化された足跡は、やはりもうすでに足跡ではない。

 フィーディーニのウ゛ィラからハンネスの採石場の簡易トイレまで、11.6kmに渡って断続的に続く足跡が、現存する純粋な足跡の最古のものだといわれる。