キャベツ
「おかしなことを言ってみて。」
そう、彼が最後に笑ったのは、8月2日のベネズエラの建国記念日が最後だった。私が噛んだキャベツだ。噛んだらキャベツになった。その日彼は東京に居た。私の部屋に居た。私の部屋にはいつも何かが干してある。東京はモノの乾きが悪いから。けして湿度が高い訳ではないと思うのだけど、白いシーツが一週間乾かないことなんてざらだ。白いシーツと縞々のTシャツ、下着。彼はキャベツになった。
ハマボウフウの花言葉。
ツィード。
「オーバースペックなんだよ、君は。もう少しクロックを下げてさ、」
「別に私は…、」
何をするわけでもないのに、いや、何をするわけでもないからこそ、こうして責められているのか。洗剤の泡、カス、水に流せないことばかり、落ちる、落ちそうだ。どうやって食べてしまった? 食べずに腐らせてしまった。
「彼を?」
そう。
腐ったままそこにいる。
青い空は青いままで子供らに伝えたいと歌った。そういうフォークシンガーがそこいらで歌っているからだ。乾く空がないのだ。