ウソ日記

ない。ある。

羊飼いの銃

 ふわふわと頭ともう少し先に何かあるのが恐い。忘れ、そういう言葉がうかんだ。頭を板にもたれかけさせてみた。頭は板にくっついていなかった。
 鍋を皆で食べられる機会がもうないと思ってしまうぐらいには、ウベ君は悲観的な人間だった。鍋は野菜がいっぱい入った、ああいう鍋だ。けしてカニ鍋とか河豚だとか、そういう主役以外の不純物を許さない鍋じゃない。ああいう、いろんなものをすくって、その構成に一喜一憂する鍋だ。ウベ君はそういうものをもう一度食べたいと思った。けれど彼には無理だ。ウベ君には無理だ。ウベ君には、たとえ大金を払ってカニ鍋や河豚鍋を食べることは出来ようとも、無理だ。

「ウミンチュ言葉におけるツァ行格変化のローンダール順位について述べよ。(30点)」
 現象に名前を付けるだけの行為にはもう飽きたつもりだった。私の家には蝿がいる。私もウベ君みたいだとは思いたくなかったのだ。そのために、ウベ君みたいにならないために、私は見続けてきた。ウベ君のことを。

 サンボーイの掴んだコンゴヘリウムはどこにいってしまったのだろうか。今も老いた大地の底で、ダグラス=オウヤン星系が伝えるものを輝かしているのだろうか。だとしたらあそこに見えるブーイブーイにわめいて見せることが出来るのだろうか。シェイクスピア分子を手に入れた。戸惑いが、1増えた。