ウソ日記

ない。ある。

祖母の家

 ながいながい坂道があってその両脇には草が生えている。その両脇の草の帯は150m程続いて急に断崖になる。つまり、合計で300mの幅の斜面が、神林に続いているのだ。神林にはおばあちゃんの家がある。おばあちゃんの家には、キツネとタヌキとビーバーが住んでいて大変だ。キツネは枝毛を気にするし、タヌキはムカシトカゲのフィーニィーのことがいつまでも忘れられない。ビーバーの作るダムの音のせいで、池の金魚は慢性的な不眠に陥っている。フィーニィーがいたのは去年の午後だ。その頃はおばあちゃんの家はいつも夕方だった。朝顔の花はいつもしおれてばっかりだ。フィーニィーはふしぎそうな顔をいつもしていた。何で自分がここにいるのか分からないというような顔だ。フィーニィーの目の上の小さな角は、昨日を映し出す。
「昨日はスイカを食べました。今日はアイスクリームを食べます。」
 そんな日記を、おばあちゃんの家の押入れから見つけた。僕が昔書いたものだった。小学一年生の頃だ。とてもぎこちない字だ。でも一生懸命で、結構、悪くない。少なくとも、僕が小学5年生の今書いている字よりはずっと。
「ほらほら、また枝毛がありますよ。」
 キツネが言った。