ウソ日記

ない。ある。

ピルグリム

 階段を上っていった。多分550年前の安政年間に作られたものだ。そのころ日本は統一政権の下、静かに安定していた。停滞という人もいるだろうけれど。ピルグリム系の子供たちが続々と帰還している今、話題といえばナスタチウムのことだけだ。一代限りの自然変種が高値で取引され、マーケットは活況の混乱の中にいる。チゲ屋たちはそれが自然変種であるかアーテッドであるかを見極める目を、左の心臓と引き換えに手に入れる。キナ臭い連中が集ってくるのも道理で、先日などは嵯峨神社の前の通りと集落一帯で、シノワ同士の激しい銃撃戦があったとか。
 階段に沿って、桜の木が100本ほども植えてある。3月にはきれいな花を咲かせる。ピルグリムの光源がそれを優しく照らすのだが、古い水銀管の灯りが懐かしいという人もいる。