ウソ日記

ない。ある。

ナマズ

 足を浸しているのはMC4500の廃液で、オレンジと黒の混合物だ。僕は母の13回忌で、11年ぶりにこの街にやってきた。塩基系システマーの活動が盛んなチャンタオでは、大量のガラス系溶剤が使われ、廃棄される。そのすべては表向きはちゃんと処理され無害化されているということだけれど、一歩ロウアーヤードに足を踏み入れればこんなものだ。パイプと蒸留塔による垂直方向の線分要素が多い景観の、地面の替わりだ。

 昨日ロボトミーを受けたせいか、気分がとてもいい。ナマズの唐揚げが今日のご馳走だ。寫族の忌の儀式にはナマズが必ず振舞われる。ナマズは寫族にとって凶魚であるから普段は食べないのだけれど。ナマズの8本のヒゲは彼等がこの廃液内を泳ぐとき、とても有効な探知器官になるそうだ。