ウソ日記

ない。ある。

武者

 久しぶりに本を消化しました。武者小路実篤の、「一人の男」を読み終わります。「何だこの全力のグダグダ感は!?」と驚愕しがちな彼の文章ですが、衒いなく言いたい様に言ってるその感じは嫌いではないです。「構成? 何それ」ってあたりも。自伝的小説なんですが、連載中にうっかり実時間に追いついてしまってからの怒涛の言葉の奔流なんか最高です。ものすごいテンションの高さと全力の人類愛が素敵。あ、声に出して読むといいですよ。
 彼の文章を読もうと思ったのは高橋源一郎の「一億三千人の小説教室」に載っていた引用が素晴らしすぎたためで、こっそり手本にしていたりしています。同じ言葉を僅かに変えて繰り返す感じとか、最後の締めとか。「彼の文章を練習のため真似るのはおすすめできません」と書いてはありますけど、話芸や何かでも、面白いと感じたらつい同じような喋り方をして見せるものでしょう?
 ・・・ああ、そういえば昔っから自分、富野言語には感染していますね。おそらく、文章や台詞の「スタイル」というものを僕が最初に意識させられた人なのです。「スタイル」っつうか、アレは単に日本語が下手なだけでは? という意見は慎んで却下します。
 下手な文章といえば、ちょっと前に「リアル鬼ごっこ」が話題になりましたよね。あの本を酷評したとある文章内でその例として挙げられた一節を読んで、そのあまりのステキさに「読んでみたいなあ」と思ってしまったことがあります。・・・親近感? 「こういう事を書きたいときに、こういうふうにしか書けないんだよなー、俺ら能力のない人間は。」ってあるあると頷いてしまう共感がヒットを生んだ一つの原因かもなーと思ったりもしました。結局まだ読んでないですけど。