ウソ日記

ない。ある。

大魔人

 +と−を合わせたら、すごいことになった。煙がもくもくと出て、大魔人が現れた。
「おはよう」
 と私は言った。ついうっかりだ。うっかりでなければ大魔人に「おはよう」なんて言うはずがない。気持ちのよい朝の研究室だったのだ。まあ私は徹夜明けだったのだし、ポスドクの坂城君は今日で3徹目だったのだから、「気持ちのよい」はウソか。
 それに、もう一つ理由がある。その大魔人の顔が安永にそっくりだったのだ。安永とは昔付き合っていた。今、彼はサンタフェでUFOの研究をしているという。別れたのも実はそれ回りに関することだったのだが、それはもうどうでもいい話だ。
「おはよう」
 と大魔人は答えた。その声まで安永に似ている。