ウソ日記

ない。ある。

戦隊

 三宅さんが言っていたのは、11月の午前三時にここへ来て欲しいということだった。11月ならいつでもいいんですか?と尋ねると、そうだ、と答えた。仕事が立てこんで、土日の休みもない日々が続き、ようやく三十日の午後三時、仕事が終わってから行った。三宅さんが待っていた。重要だと思ったのだ。潮留から牛松に行く道の途中にある三叉路を海の方に曲がってしばらく行ったところにある空き地は、昔、悪の結社の秘密基地があった場所だ。
 12年前の冬、日本中を震撼させたあの事件を覚えているだろう。新宿のど真ん中でのさまざまな種類の不安定核種を詰め合わせにしたダーティボムの爆発に端を発したそれは、結局、2月23日の中部電力刈谷原発二号機の炉心溶融と、富士山麓での50m機械同士の戦いで幕を閉じた。主犯のビッグマン大魔王は現在大阪高等裁判所での審理を受けている。そのときのレッドが現文部科学省大臣の村上聡だということはみんな知っているだろうけど、そのときのオペレーターマスコット、リコちゃんの基底ボイスを吹き込んだのが、三宅さんなのだ。事件があったとき、僕は北海道人で、幸い、問題となるような量の放射性降下物を浴びることはなかったのだけれど、あのあと日本の平均寿命は60歳台にまで下がった。今でも回復はしていない。今国会は北九州市にある。
 錆びた鉄の上げ蓋を持ち上げて、懐中電灯を脇にはさんではしごを降りていく。この地底で、彼らは日本への憎悪を募らせてきたのだ。そして爆発させた。あんな形で。
「彼らがいなければ、きっと僕たちがそういう組織へと変質していったんだろうけどね。」
 と、三宅さんが言った。昨日の朝生では、レッドが在日朝鮮人の追放を声高に語っていた。ブラックとグリーンはもう過去の人だ。大量のアルコールの摂取による肝臓ガンだったそうだ。ピンクは今、負け犬系の中年バラドルとして、週3くらいでテレビに顔を出す。イエローは、つまり僕の父だけど、インドに行ってしまったまま帰ってこない。