ウソ日記

ない。ある。

バス

 彼に駄々をこねられて、結局アンカレッジまでバスで行くことになってしまった。こういう甘やかしはよい結果を生まないのだが、昨日のバスの寒さでろくに眠れなかったことや、娘の学校での問題のことで頭が一杯だったこともあり、つい折れてしまった。彼と言い合いをするのはとても精神的スタミナを消耗する行為なのだ。針葉樹はよくもこの寒さの中ですっくと立っていられるものだと思う。
 昨日は眠るのを諦めた後、本を読んでいた。パム・ボーフィールドの「眠らない探偵」シリーズの最新作だ。といっても刊行されたのは5年前で、次の巻が出るのは早くても2010年だとか。もう4度は読んだだろうか。同じページで、同じ話が繰り返される。私の人生とは違う。しかしまあ、それは誰にとってもあたりまえのことだ。子供は代謝が活発なのか彼はぐっすりと眠っていた。ときどきもぞもぞと体を動かす。暖房が十全でないこんな旧式のバスが走っていることに、今のこの国の微妙さを感じたりもする。それはよさげさなのかもしれないし、そうでないのかもしれない。私の父はそれをよさげと感じるタイプの人間だった。実家にはもう何年も帰っていない。最近シンシナシティを通り過ぎることはあったけど。