ウソ日記

ない。ある。

アスタチンラヴァーズ

 ふたりはラヴァーだ。アスタチンの水着を持っている。それがいいとか悪いとかという話ではない。アスタチンの水着はとっても素敵なことは確かだ。
 彼らの海は虹色のドレスだ。どこまでも広がるドレスを蹴って、ふわふわと舞うレースをかきわけ走る。ときおり水のようなゼリーのようなきれいなものが飛び交って、二人の追いかけっこに華を添える。アスタチンに反応して、いろんな色に姿を変える。向こうに雲が広がった。雷だ。雷がやってきた。二人は笑う。雷が二人には当たらないことを知っているのだ。雷がドレスの海に乱反射して、空気をオゾンに染める。励起が落ちる光はさっきの平和な色とは違うようで、二人の喜びを益々活発にする。
 淋しさは知らない。悲しみも知らない。二人は永遠に幸せだ。アスタチンの水着が二人に与えるものは、単なる幸福だけではないのだ。それはすべてだ。金属光沢のそれは、それ自身の喜びさえ満たそうとしている。