ウソ日記

ない。ある。

冬っぽさ

 見上げたら電線にカラスが止まっていた。雲のないマットな青の空を背景にした黒いそのシルエットは、気持ちのいい画だ。ポケットに手を入れて家路を急ぐ。川の側の道でカメラを構える人がいた。その先を追うと、カモの類いの水鳥がいた。都市の水辺にも鳥が集まるのだということを忘れてた。北から渡ってきたのだろうか。鳥はいい、などと言いたくはない。

 プメナノの船が帰ってきた。おもちゃのトカゲは彼の好きな物のの一つだ。ゴムで出来たそれは、尻尾を持ってぶら下げると赤い舌をびろんと垂らす。その質感はある種の本物っぽさを持ってる。パルプ雑誌の本物っぽさと同質のものだが、やはりそれは、「リアル」なのだ。

「ただいま、ヒロシ。寒いね、ニッポンは。」
「そりゃあいま冬だ。こんな吹きっさらしの所にそんな薄着で居りゃあな。上着はよ?」
「サメの餌だよ。」
「ああ、そうか。」

 そんな会話を頭の中でしてみた。