ウソ日記

ない。ある。

もう一つの東京

 もう一つの東京があります。その東京は東北と南西を標高600m〜1000mの山脈で囲まれていて、南東は山脈から延びた半島に囲まれた狭い湾になっています。その湾内の埋立地ではいくつもの発電所と高炉が固形の空気である白煙を吐いています。南側から高速を使って東京に入ると、山を抜けてすぐに工業地帯の眺めが広がって不思議な気分になります。高速はそのまま工場群の中を走り、ぐうっと北に曲って、近代化されたビル街の東京の中心街に向かいます。
 東京には川が一本流れています。川は両岸ともフェンスに覆われていて、遊水地に入ることはできません。堤防の上の細い道は幹線道路の抜け道としていつも混んでいます。この東京ももともと城下町だったようで、再開発されていない地区の道路は入り組んでいます。自転車で走ってた人が子供たちの群れに囲まれています。色の濃い陽炎と影が上水の配管を浮き上がらせています。トタンの波板の屋根が遊水地には広がります。