ウソ日記

ない。ある。

四月

 どうせ投げっぱにするならと、ちょっと可愛さを加味してみたらそれは火の鳥だった。信じられない話を聞いて、つい信じそうになるのは悪い癖だ。今でも思い出す、5月のあの日々のことを。レンツェンソールの橋蛇のことを。橋蛇なのか。

 私の前に立っていたのは四月で、私は彼に好意を抱いていたが彼は素気無かった。太鼓をたたく橋蛇が彼を精一杯ヨイショしていたが、誰であろうと彼の関心を引くことはできなかった。糸杉の並木の田舎の道を歩いて、私は暑さを感じていた。夕方は永遠に来そうになかった。

 シメジが見ていたのは明日起きるすべてのことで、その中に私は入っていなかった。郵便受けはただの箱なので私は笑うしかない。それがいいことなのか考える気はない。ババを引いたアリスがくしゃくしゃになるのを黙ってみるのだ。橋蛇の指摘に私は不機嫌になる。占いの中に真実を見つける行為に耳を尖らす。ノオシとか。渦巻いた空に苔鳥が飛ぶ。四月がそれを見る。

 橋蛇はバジリスクといわれる類の蛇の一族で、毒と石とを司る彼らの中では位が低い。わずかに奥歯に毒が、それもネズミすら死に至らしめないようなものがあるだけだ。12の月の四月に憧れるのも無理はない。しかし、苔鳥にさらわれるような者に四月が関心を示すわけがない。橋蛇の落としていった太鼓をたたいてみる。ペコペコとまがい物じみた音がする。四月は何かを聞くことがあるのだろうか。

 野菜のたくさん入った煮込みを、玉葱に添えて食べる。ザラッと、溶けたジャガイモが口にあたる。