ウソ日記

ない。ある。

明日

 明日は晴れです。間違いない。

 そういって、彼女は出かけた。傘も持たずに出かけた。僕には彼女を引き止めることはできなかった。彼女はいらない物を置いていった。

 ディズニーランドの跡地には、いくつもの容器の欠片が埋まっている。それを掘り出して集めるのが僕の仕事だ。日が射せば暑い。雨が降れば寒い。そういう仕事だ。ときおり、曇り空の日が訪れる。そんな日は過ごしやすい。
 容器の欠片を掘り出したら、仲買の沖さんに預ける。沖さんはそれを大まかに分けて、タツヒトさんのグループに渡す。彼らはその欠片をつなぎ合わせて、ディズニーの夢を復元する。

 ウミネコがみゃあみゃあ言うのを、止めるような人は誰もいない。大げさな事ばかりする道化師も、30年前に殺された。明日は雨だ。僕の感がそういう。空気が湿っているような気がする。寒いのは嫌いだ。暑いのはもっと嫌だ。誰かがこっちの方を見ている気がする。と思ったら、トウゾクカモメの目だった。

 タツヒトさんのグループが、また一つなにかを復元した。不恰好なその鳥は、到底空を飛ぶ様に見えない。ディズニーの夢の復元にはまだまだ時間がかかる、とタツヒトさんたちの話すのが聞こえて、僕は作業の手を休める。

 家には、現場から隠して持ってきた容器の欠片がある。

 彼女が出かけた次の日は、しかし、僕の予想と違い晴れだった。その日の現場の気温は、摂氏で50℃を越えた。僕の仲間が一人、熱中症で倒れて、そのまま死んだ。