ウソ日記

ない。ある。

火星野菜とロリポップ

「おはなし、聞かせて。」

 火星育ちのプラスチックネギは、いつもうじうじしていた。あまりにも彼がうじうじしていたので、見かねた彼の友達のポリステルラーメンは頭にきて、彼を地球に連れて行った。
「しゃもじ入れは、どこさ?」
「ねえよ、んなもん。」
ここにはな、とポリステルラーメンは付け加えた。プラスチックネギは泣いた。そこに現れたパーセルミガール。パーセルミ色の鼻。木星人。

 雑念と思い出に彩られた地球の夜は過ぎていく。

 うじうじしていたプラスチックネギは元気になり、ついでに彼女と暮らすようになる。ポリエステルラーメンは、地球を旅するホームレスの群れに混じり、ダカールやラサ、アデレードを巡る。
「ガンダマーなのさ、やつら。しかも連キチ。」
すべては失われた都市の名。ポリステルラーメンの台詞の意味は、プラスチックネギには分からない。
 天井から落ちてくる水は雨と呼ばれるが、天井と空をごっちゃにはしない。火星野菜も金星金魚も、ホームレスですらそれは同じだ。だがカリストの出は違う。外人(そとじん)は人間じゃないと皆言う。パーセルミガールが壁を伝わないと歩けないのを、プラスチックネギはかわいそうに思うけど、それがエゴだというのは分かってる。

 地球はいいところだ。
  
 アスタチン26の短い葉状突起の先端は鋭く、触れる物を皆傷つける。ヴァゴ・エイトのトランスポーターを使うと法外なエネルギーを要求される。パーセルミガールが死んだ。もちろんよみがえったりしない。

 だけどリセットはきく。SFだから。