ウソ日記

ない。ある。

カンダカタン

 しくったねー、しくじったねー。

 神田川が無くなったころ、私の姉がブティックを開いた。名をカンダハルという。なぜか中央アジア系の衣装を多く取り扱っていたがそんなものが瀟洒なマダムたちに流行るわけもなく、私が遊びに行ったときにはいつも、姉はレジのところで携帯ゲームをしていた。
「今日は何をやってるの?」
カタン
「相手は?」
「CPU」
「さみしいね」
 というわけで、たまたまそのとき店にいたお客さん、名和啓子(34)、戸田敬一郎ジェファーソンJr(59)とリアルカタンをやることにした。マップタイルの絵は私が描いた。駒は姉が彫り、ダイスはジェファーソン氏が念力で作った。
 3回やって、私が一回、名和氏が二回勝った。姉は一回も勝てなかったけれど、ひどく楽しそうだった。