ウソ日記

ない。ある。

CIV

 崖がある。もう一段、崖がある。崖の下に川がある。丘がある。木がある。木が何本かある。「何本か」っていうのより、本当はもっといっぱいの数があるのだけれど、僕の意識の上では「何本か」だ。その木は緑の葉をしている。葉の縁には細かなぎざぎざがついている。そのぎざぎざの大きさは不規則だ。それでも数倍の域は出ない。その葉の上にふわふわの毛がいる。毛虫じゃない、毛だ。白っぽいふわふわの毛。それもいっぱい。ふわふわの毛たちは葉の上で都市を作る。葉脈という水路を開放し灌漑し黄色い樽状の米を育てる。チタニウムの防壁を用いてしばしば訪れる外敵に対する防御を構築する。過剰な関税で旧弊な産業を放逐し、新たなリン脂質を小胞に巻きつける。毛の下位構造としての花弁、都市の放送網としてエアロゾルを交換する。3個のメイスが1個のバリスタを形作り、ジャイアントな敵対クリーチャーに向けて発射される。いたっ、僕は指先を押さえて飛びのく。