ウソ日記

ない。ある。

中川

 ケーキは食べない、そのかわりにお酒を飲んだ。お酒と言っても朝の酒だ、朝と匂いの酒。混乱した中川さんがハンドルをわざわざガードレールの方ヘ切って、そう、私には本当、わざととしか思えなかったのだけれども、中川さんの顔を最後に、バックミラーの向こうに見たとき、彼は苦笑いをしてた。そう見えた。私は後部座席に座っていて顔半分と腕を片方持って行かれた。中川さんと、もう一人、助手席に座っていた同僚は、頭から何から、全部持って行かれた。

「あいつらはみんな、死んでしまった。だから僕も死ぬべきだ。」

 中川さんが実際にそう言っていたのを聞いたことがあるわけではないけれど。彼の言いそうな事を書いてみた。
 朝の酒はもう無くて、昼の酒を開けることにした。まだ十時だけど。本当はケーキの時間だ。