ウソ日記

ない。ある。

起床

 目覚まし時計の秒針がぐるぐるとすごいスピードで回っていて怖くなった。1、2、3、と数える間にもう一周している。さっき一回目のアラームが鳴ったはずだ。7時20分の。二度寝するためにスヌーズで消した。じゃあ今何分だ? と考える間にもどんどん針は回っているのでもうそれから大分たっているのか、でも、二度目のアラームはまだ鳴ってないしもしかしたら鳴っていたけど消したのかというかちゃんとスヌーズにしたのか、でも、この回り方はやっぱりおかしい。手を伸ばして、目覚ましを掴んで引き寄せた。もっとよく見るために。
「この電話番号は現在使われておりません。」
 そう書いてあった。カチャッと鳴って、次のように変わった。
「失われた夢は、3秒後には戻らなくなるでしょう。」
 その手の小粋な小ネタを読むために文字盤を見たんじゃない、と思った。思ったけれど、それは注意を惹かれてしまった後だから言い訳だ。3秒後に何があるのかは知れないけど、と考えて、何で三秒後のことなんて考えたんだっけ、と疑問に思った。毛布から抜け出すのは難しい。朝の光だって万能じゃないのだ。ブラウン管に触る。テレビのスイッチを入れる。音が聞こえない。ニュースの人が何か喋っているみたいだ。

「コウモリガサを用意してください。」
 いつものエンターキーを押して、もう少し身だしなみを整えた方がいいのにと思う。大好きな言葉だけでは生きて行けないし、たまにはネクタイだって必要だ。もう一度、と言う。もう一度。
「アシガヤ優勝ですね。」
 良かったですね、とは言ってくれない。