ウソ日記

ない。ある。

コーヒー宇宙

 コーヒー豆犬に宇宙を見たとか言うと君は笑う。そりゃしょうがない、まずもって宇宙を見るという言い方が陳腐だ。陳腐というか正しくない。「宇宙は食べるものです。」モーリシャス教授の真似をして口をとがらかせて、でも目はニヤついたまま、三限ぶっ通しの塾講の後のどこかノコギリ波のノイズが絡まるような声で、君は喋る。
「星というシュガービーンズの食感はH?U領域に絡めてバリバリと野蛮にかみ砕かなければけして理解できませんし、四つの味を分解しても意味がないのです。ネビュラは巻きものなら逆らわずに口の中に含みなさい、そうでなければできれば一口、多くても二口までで。それ以上ではikiではありませんよ。」
「よく覚えてる……。」
「飲むたび言うんだもの。覚えない?」
「どうだろね。」
「それにまあ、喋り方はともかくとして、基本的には間違ってないでしょ。あんたのたわごとと違って。」
「宇宙、見えない?」
「見えない。」
 
 コーヒー豆犬というのは1930年代頃に固定された比較的新しい犬種で、オアフ島及びハワイ島が西洋人に発見された際、その航海者が持ち込んだ長毛種が元になっているらしい。毛が深い茶で、ちょうどコナの中炒りのような色なことからその名が着いたようだ。成犬でもそんなに大きくならない。手に充分抱き抱えられる。