アパート

　お子様ランチを食べさせてもらう。旗が無い。残念だ。あの旗がいいのに。あの旗が無いとだめなのに。

　帰ってくるとネコがいた。部屋の中に。鍵を掛けていたはずなのだけれど。暗い中でにゃあと鳴いた。明かりを点けると、部屋の真ん中の本の山の上にちょこんと乗っかっていた。黒いネコだった。
　好奇心は子供の時に、救急車につれられてどっかにいってしまった。
　蕎麦はなまはげが、僕のものだと叫んだ。

　そこだ、そこ。ほら、そこ。ネコになまはげとの戦い方を仕込む。蕎麦を取り返しに行ける。旅の準備をする。熱が出る。３８．８度。踏み切りの遮断機を透かして見た街の景色は、あれ、いつのまにか雪が降ってきて、よく見えなくなった。そういえば、アパートの玄関に鍵を掛けてない。