匂いウォッカとワセリンと
湿疹や疱膿だらけの彼の皮膚はもちろん気色のいいものとは言えないのだが、筋肉や骨格の端正さ、脂肪層の厚さと張りのバランスには感心してしまったのでまあ良しとする。
「そんなエロ小説はいらん。」
「そうかね? 夫よ。」
「誰が?」
端境期の蕎麦にRの付かない牡蠣、ついでに宵越しの玉露。探すのは母。居ないのが父。畑の若いエンドウを食べて一夜を過ごした。
「あとペンギンのスープ。」
「日本にいるのか?」
「岩手にはいたよ。」
彼はどうやら、ペンギンが苦手らしい。
「いやそもそも食ったことないし。」