ウソ日記

ない。ある。

パレオパラドクセ

 息が白くなれば冬が来た事を感じるし、赤くなれば春の訪れを知る。春はそういうふうにしてやってくる。赤い胞子をばらまく黴達が肺の中で一斉に出芽をはじめる。「ゴジラだ、ゴジラ」って遊んだものだ。
 3月の9日にはケーキを作ってみんなで食べる。少し前の節句で白酒をいくらか余らせておいて、生クリームに混ぜ込んでたっぷりとシフォンにかける。新芽を摘んできて添える。このころになればナガソデやニコゴリが南向きの土手に顔を出している。ひな祭りという言葉を使う年配の方も、最近は少なくなった。もっとも、コミュによればそのひな祭りというのは本来は節句と同じ日にやっていたものらしいのだが。

 ゴジラ? ガイガン? 

 「ディプロドキシカルなメガチューブ」、という言葉が頭の中に浮かんだ。どう意味だろう?

 怪獣図鑑を覚えているだろうか。怪獣というものを知っているだろうか。ディプロドクスもそのうちの一つだった。長い首の怪獣だ。ディプロドクスはあまりにも長い首を持っていて、その首の重さで死んでしまった。その首は地面にめり込み、後に海水が入って紅海になった。メッカには今でも、偶像を禁じるムスリムの礼拝堂の傍らに小さな、一メートルにも満たない小さな、ディプロドクスの廟がある。
 メガチューブが生まれたのは比較的最近だ。フィンランドヤコブセンが生贄に太陽を用いて、一つの筒状の空間でグリーンランドと金星を繋げてみせた。現代科学はすでに個人の天才の時代を脱した、そんな言説をひっくり返す素敵にクールな仕業だった。ヤコブセンアメリカはフェニックスを拠点とする拝日教系カルトにテロられてしまったが、一度走り出した科学は止まらない。星々を次々と犠牲にして、チューブは銀河に根を張っていった。