ウソ日記

ない。ある。

珊瑚を連れる

「どうしよう」
 僕は言った。残りの人を選別出来なかった。

 打ち上げの有頂天の中で、からかった珊瑚を大事に持っている人達がいた。からかいを受けながら耐えていた。珊瑚は月の満ちるとき無数の卵をばらまく。とてもロケットには持って行けない。そんなことは彼らも分かっているはずだ。分かっているはずなのに。
「グラハムさん、駄目ですよ、それは」
「何とか、…何とかならんかね」
 木星の緑の土で育った野菜の味を知れば、珊瑚なんて…、とも思うのだけれども。

 優しげな傲慢さについて。

 テントを張って休んでいる。明日は今日やった数の倍の人間をより分けないと。珊瑚の話は、実際のところこの選別とは全然関係がない。