ウソ日記

ない。ある。

フフホト

 滝田君が言った。

「フフホト?」
「そう、フフホト。」
「あー、フフホトねー。」
 と、適当な相槌を打っておいた。そうしたらいきなり喋りだしたのである。怒涛の如くに。滝田君がこんなふうに喋るのを、実は私は今まで一度も見たことが無かった。中学の頃からの付き合いである滝田君は、・・・ああ、「付き合い」である、とは普通言わないか。でも、知り合っているのが「知り合い」なら、付き合ってるのは「付き合い」でもいいような気がする。と、ここまで書いてちょっと辞典や例文などを調べてみたのだけれど、どうも上記の使い方は広く世間で認知されているらしい。「付き合いである」という言い方に違和感を憶えたのは、単に私の言語世界が狭かったからのようだ。反省した。
 今日、滝田君は白いボタンのグレーのシャツに、細いジーンズを着ている。やや長身で、石を投げるのが上手い。
「中国の内蒙古自治区の首都。市は新旧2城に分かれてて、16世紀中ごろ,アルタン=ハンが城郭(旧城)を築いたのが始まりで、モンゴル人によってフフホト(青い都)と名づけられたんだ。明末には漢民族の地となったため、帰化城と改名したみんだけど、清の乾隆年間(1736〜95)に旧城のある北東に新城が築かれ,綏遠城と名づけられた。その後、民国時代には新城と旧城を合わせて帰綏と改名し、そいつらの対蒙対策の中・・・」
 一時間後には、私もフフホトについて大分詳しくなっていた。でも、滝田君の使う単語のいくつかが、妙に気にかかった。