ウソ日記

ない。ある。

子供の日

 一歳半の子供を泣かした。その弱さに一瞬殺意しか憶えなかった。頭を手でぎゅっとつかんだらクシャと潰れてしまいそうで、困った。もう少し反応が早い人、つまり、自分が、脳と動きがちゃんと同期している人だったら、やってしまっていただろうと思えた。やってしまえた人たちが、新聞を賑わすのだろう。そのうち私も、新聞を賑わすかもしれないな、とうっかり考えついたら吐くしかない。私が子供を持っていなくて本当によかった、と言いたいところなのだが現実は。
「猫が」

 トリガー。いやなものがくっ付いている。

「猫の毛だ」
 猫の毛が部屋の中に散らばっているのは、きっと錯覚だ。私は猫を飼っていない。猫にはいい思い出がない。右目のまぶたの上あたりにうっすらと7mmぐらいの白いあとが残っているのは、小学4年生の頃、隣の家の三毛にやられたのだ。私の記憶では、縁側に寝ているところをいきなり襲われたことになっている。
「ジゴペタラム」
「赤くて?」
 生死の境をさまよった。

 娘はすくすく育ってる。