歌
歌だ。
歌ったら楽しかった。そのことだけを支えに今日まで生きてきた。最近どうもおかしくなった。歌がいなくなってしまった。
「朝、昼、夜のどれが好き?」
僕は夜だ。君は昼だ。明日僕が出会う人はきっと朝だ。朝が好きな人と出会うのは苦痛だ。苦痛すぎて分からないような苦痛さだ。苦痛さはある。いつだってある。苦痛なのに頭を上げないといけないのはつらいし、目をあけてしゃべらないといけないのもつらい。眠い。何か呟いた。「ロマンシア」
「上からおかしなものが来たよ。縞々な球たちだ。きれいなケプラー比を保って回っている。らんぐりっじ。そう、ラングリッジだ。見て。周期が変化するだろう?」
大気に密度があふれる。あふれ出た密度はそれぞれ粒状になる。
「ブタペストから来たんだ。君は?」
「東京から。」
「東京か。いいところだね。」
「ブタペストはどんなところだい?」
「電卓なんだ。」
「へー、すごいね。電卓なんだ。」
「あした?」
明日。
明日の次は今日だ。今日の次も今日だ。今日、僕の歌を見つけなければ、僕は死んでしまうのだろう。