ウソ日記

ない。ある。

オムニポータル・オブリガル

「燐光のみ遠くにまた近くに現れ出でては我を慰める。海舟の野に叛気滅濫せしは津に見え悠と為すが如し。そは基らん、誰が汝を空功の身に委ね、似つに節して其の駿対を授けようとは。是し彼の崎枯れを逃すはこれ易化に? 先じて法せば譲らざるなり。」

 暗い海の底で暗い言語を唱えている人たちがいる。死んでしまった言葉たちと意味の無い言葉たちの組み合わせがどれほどに彼らの心を捉えようとも、プランクトンの屍骸たちの、雪に似た堆積物の返事があるはずも無く、もちろん彼らもそのような事など想定して言葉を発している訳ではないのだが、やはり少し悲しいことだ。彼らはその言語を信じていないのにもかかわらず唱える。信じていないにもかかわらず、暗い暗い、重い重い海の底で、彼らは唱えつづける。彼らのしていることに対して僕らはどこか焦りに似たものを感じるのだけれど、そう思うのはこちらの弱さだ。