ウソ日記

ない。ある。

火星野菜とロリポップ(3')

 同じ話を繰り返している気がする。

 タルソスの地下は街が地層の様に埋もれていて、下に行くにつれて内破し、道を見つけることは困難になる。豪白虫がうごめくのはB層からD-2層にかけてで、専用のト−チを掲げていかないと命が危ない。豪白虫のモリブデンの励起光を嫌う習性を利用するのだ。そこを過ぎるとΔ-asilleの慣性補正化力が働き、真の意味で迷路になる。最初のアタックを、金星金魚のプラジネットディスカスが始めたのは砂の季節の午後のことだった。タルソスの地下には猿人たちの宝が埋まっているという。もちろんそれはただのおとぎ話で、そんなことを信じている者は誰もいかったのだけれど。プラジネットディスカスヘテロクロモゾアの散栴花で、母系をたどればかの三香のオルドシスヒチテスにいたるという。その名前は有名だ。金星金魚のあのたおやかな舞を初めて踊ったのが、彼女だ。そういう類いのものを捨てて、彼は火星にやってきた。プラジネットディスカスはそれこそ何万回も潜ったのだという。金星金魚の寿命というのは他のものたちに比べて短いのだが、その大半を潜る為に費やしたのだ。
 獅子顔の女神はいつまでも踊る。ついて回るのは昔の機械。素顔は金星金魚と幾何学テリアしか知らない。プラジネットディスカスの話は笑い話となって金星金魚の間で伝わっている。これを題材にしたソネットもいくつか上演された。見たことがないものはとても怖いものなので、それはなかったことにされたのだ。きっと。火星野菜というのはどちらかというと保守的なものけど、金星金魚も大概のものだと思う。火星野菜の田舎くささを鼻で笑うくせに。金色だったり強い赤だったりするものを見せられたから困ったんだよ。僕らはそういうものに慣れていないもの。そんなに強い光だったのかよ?

 同じ話を繰り返している気がする。

「誰が」だろう?

 ステルラーメンはふと思う。ふと思
 うが、今はそれ以上に地球に惹か

 誰だ。
 誰だ。