ウソ日記

ない。ある。

火星野菜とロリポップ(3)

 同じ話を繰り返している気がする。

 金星金魚のプラジネットディスカスが火星にやってきたのは、タルシスの地下の話を聞いたからだった。タルシスの地下には猿人たちの宝が埋まっているという。彼を見るとみなビックリする。プラジネットディスカスツインテールもフィンも持たない。もっともそれらは火星の希薄な大気の中ではただの邪魔ものに過ぎないのだが、金星金魚とはこうあるべきとの先入観は火星野菜たちの間でも強い。

 彼は毎晩潜る。昼はその体を粋人に任せる。ついに見つけた。

「金色だったり強い赤だったりするものを見せられたから困ったんだよ。僕らはそういうものに慣れていないもの。」
「そんな強い光だったのかよ?」
「僕は知らないけど。まだ苗だったし。」
「で、結局また地下に戻されたのか。俺も見てみたかったな。」

 他のやつに見せずに自分だけで眺めてりゃよかったんじゃないのかという感想は彼に対して不当なのか、とポリエステルラーメンはふと思う。ふと思うだけだ。彼に対してそれ以上の思い入れはない。金星の濃い空気を少し懐かしく思うが、今はそれ以上に地球に惹かれている。

 ホームレスの黒い外套と同じで、自分のフィンも地球に似つかわしくないんじゃないかと思ってる。