ウソ日記

ない。ある。

ジョニー

 猫目のジョニーが窓から顔を出したので、僕はリンゴを投げつけてやった。14バンチのジョニーのアパートは、擬古的に作られた赤レンガ風味の外壁が本当に古くなってしまっていて見るに耐えない。プラのひび割れの情けなさは本物のそれの情けなさをはるかに凌駕していると思う。もっとも、僕だって本物をじかに見たことは無いんだけれど。
「明日から冬みたいだね。」
「人にいきなりリンゴ投げといてそれかよ。」
 ジョニーの頭を掠めたリンゴはそのまま角度を少しかえて、彼の部屋の中に入っていった。ジョニーは手にもっていた黄の絵具のチューブを僕に投げ返してきたけれど、それは僕にはあたらなかった。すぐに幾分しまったな、という表情をして、その絵具を投げ返すように、とあごで僕に促した。
「ジョニー広報見てないと思ってさ。2日早くするんだよ、今年は。」
「それがどうしたよ。」
「雪、降らすんだって。明日。」
 これは効き目があった。