ウソ日記

ない。ある。

かかし

 かかしになってみた。

 かかしの身体というのはすかすかで、風が通るのが分かる。かかしになって初めて分かったのだが、かかしの足と言われているあの棒は、どうやらかかしの体の一部ではないらしい。立っているのではなく、その棒にくくりつけられているという感覚だ。藁の身体に痛みは無いが。かかしになると、考える時間だけはたっぷりある。というか、考えることしかできない。たしかに目の前の棚田の風景は元日本人としての心の琴線に触れるが、そればかり見ていればさすがに飽きる。スズメはうるさい。かかしと鳥は話しているように見えるが、けしてそんなことはない。

 そのかわりにかかしは、自分と話す。

「メタ小説はずいぶんベタなやり方になったがベタなメタほど意味のないものはないな。メタには何か物事をその入れ物を壊すような力が欲しいだから基本的に商業ベースとメタは合わないだって客層をわざわざ壊してどうする?メタは常に一発勝負だやった後次があるとか思うなそして俺はここへきたのだ。」

 言葉だけがかかしの藁の頭をぐるぐる回る。唐突に東京の街のイメージが浮かんで消えた。